BAG COLOR STORIESブランドバッグの染め替え・同色補色サンローラン・ロエベ・シャネルの事例
好きな形を残して、色を変えたい。あるいは、気に入っていた色へ近づけたい。バッグの色のケアには、違う二つの目的があります。サンローラン、ロエベ、シャネルの事例から、それぞれの選択と手仕事をご紹介します。

戻す色と、変えてみたい色
しばらく使っていないバッグを取り出すと、形は今でも好きなのに、色だけが今の服と合わない。反対に、買ったときの淡い色が気に入っていて、変色した部分を整えたいこともあります。どちらも色の相談ですが、目指す方向は同じではありません。
元の色となじむように整える「同色補色」と、違う色へ印象を変える「染め替え」。最初にこの希望を共有することで、素材や現在の色からできることを考えやすくなります。汚れを隠すことだけでなく、この先どう持ちたいかという使い方も、仕上がりの大切な手がかりです。
色を変える相談では、見た目の印象だけでなく、革や布の手触りをどの程度残したいかも伺います。均一さを優先するのか、使い込んだ表情を残すのかで、望む仕上がりは変わります。写真の事例を参考にしつつ、ご自身の一品の条件から選ぶことが大切です。
ひだの奥まで、ベージュの表情へ
サンローランのラム革のバッグは、ギャザーやポケットのある立体的なデザインです。オリーブ系から、ブラウンやグレーを含むベージュ系へ染め替えています。平らな正面だけが変わっても、ひだの奥へ元の色が残れば、動かすたびに差が見えてしまいます。
そこで、エアブラシだけでなく刷毛や筆を使い分け、奥まった部分にも手を入れます。折れ目を無理に平らにするのではなく、形に沿って色を整える作業です。この事例と同じ色変更がどのバッグにもできるわけではなく、元の色と革の仕上げを確認して判断します。
ギャザーは開いたときと閉じたときで見える面が変わります。普段の持ち方でバッグが動いたときにも、色のつながりを確認する必要があります。立体的な品物ほど、正面の一枚だけでは分からない場所に手仕事が重なります。


ピンクから濃紺へ、ロエベの新しい印象
ロエベのスエードバッグでは、ピンク系から濃紺へと色を変えています。同じ形でも、落ち着いた色になると合わせる服のイメージまで変わります。編み込みのハンドルにも色が入り、本体とのつながりが整った事例です。
起毛革は、表面がなめらかな革と同じ塗り方では扱えません。毛並みや手触りに配慮しながら、色の入り方を確認する必要があります。一般に濃い色への変更は検討しやすい場合がありますが、希望の色見本どおりに必ず再現できるとは限りません。素材との相性を見て、ご相談を進めます。
スエードは毛並みの向きや光の当たり方でも色の見え方が変わります。写真では濃く見えても、実物を別の角度から見ると印象が異なることがあります。色名だけで仕上がりを決めず、起毛素材ならではの見え方を含めて相談します。


水色を探す手がかりは、かぶせの内側に
シャネルのチェーンショルダーは、違う色へ変えるのではなく、水色を整えるカラーリングの事例です。表側が光や使用の影響を受けても、かぶせの内側などには元の色の手がかりが残っていることがあります。その色と現在の状態を見比べて調色します。
表面の模様やステッチを覆いつぶさないよう道具を使い分け、チェーンに通る革紐も含めて全体の印象を考えます。本体だけが整うと、ストラップの色の差が目立つ場合があるためです。構造によっては分解を伴う作業になり、扱える範囲を確認する必要があります。


細かな境目と、最後の仕上げまで
別のバッグの筆作業写真からも、色を入れたい場所と残したい場所の境目に手がかかることが分かります。金具、縫い目、異なる素材を同じように覆わず、一つずつ保護や道具を選ぶことが、自然な見え方につながります。
着色後は、品物に応じた色止めなどの仕上げを行います。ただし、色止めをすれば永久に色移りや退色が起きないという意味ではありません。濡れた状態での摩擦や保管環境にも気を配り、仕上げ後のお手入れの案内に沿ってお使いください。

希望は、色名だけでなく写真でも
「紺」「ベージュ」といっても、思い浮かべる色は人によって違います。合わせたい服や色見本の写真があれば、希望を伝える助けになります。元の色に近づけたい場合は、購入時の写真や、日光が当たりにくかった場所も参考になります。
ご相談にはバッグ全体と傷みのある部分、内側、持ち手を撮影し、何を優先したいかをお知らせください。色を変えると元へ戻すことが難しくなる場合や、メーカーの正規修理の条件に影響する場合があります。方法と仕上がりの見通しを確認してから、その一品の次の姿を選びましょう。
色を選ぶ前の、よくある疑問
Q.濃いバッグを白くできますか?
元の色や素材によって難しく、厚く覆うことで風合いへ影響する場合があります。薄い色への変更は一律にお受けできません。
Q.スエードも染め替えできますか?
掲載のような施工例がありますが、革の種類や状態により判断が必要です。素材の分かる写真と希望色をお送りください。
Q.チェーンの革紐も同じ色になりますか?
構造を確認し、分解や再組立てを含めて対応を検討します。本体とあわせて写真をお送りください。
Q.一度染め替えた後、元に戻せますか?
元へ戻すことが難しい場合があります。色見本と施工範囲、風合いへの影響を事前に確認してご依頼ください。
好きな形に、これからの色を。
全体と素材の写真、希望する色の見本を添えて、どう使いたいかをお聞かせください。
対応できる方法と仕上がりは、お品物の状態によって異なります。写真で判断できない点は、現物確認後にご案内します。
