2019/1/16放送「ヒルナンデス!」ぬいぐるみ修理取材の舞台裏 ~その3~

日本テレビ系列ヒルナンデス!の「宝物お直しセンター」のコーナーで、当店のぬいぐるみクリーニング・修理が取材されました。
<放送日:2019年1月16日(水)>

放送時には紹介しきれなかったデアの技術の舞台裏を含め、今回ご依頼のあったぬいぐるみの作業内容について、全3回に渡り詳しく解説していきます!

目次

両足が破けてしまったクマのぬいぐるみ

今回お直しの依頼があったのは、ヒルナンデス!の「宝物お直しセンター」に寄せられたお品物です。
どれも20年以上愛用された思い入れのこもったぬいぐるみで、毎日一緒にいたからこそ、傷んでしまった部分がありました。

クリーニング・修繕作業のご紹介第3弾は、27年間愛用されたクマのぬいぐるみ。
可愛らしい靴下をはいて、デアへやってきました。

こちらはご依頼者の方が3才の頃、お誕生日にお母様から貰った大切なぬいぐるみ。
外で遊ぶ時にも一緒だったので、子供の頃にぬいぐるみの足を引きずってしまったそうです。

靴下を脱がしてみると……
両足のチェック柄の生地がボロボロになっていました。
同じ生地を使っている耳の部分も、色あせてしまっています。

細かく見ていくと、他にも気になるポイントが!
鼻パーツの劣化、口の刺繍、中綿の交換。
右手や鼻下には、毛が抜けて剥げてしまっている所がありました。

当店ではお直ししたい気になるポイントは、事前に詳しいご要望をお伺いしています。
今回は番組「ヒルナンデス!」を通して頂戴したご希望に沿って作業をしていきます。

作業内容のご紹介

まずはクリーニング

まずは、作業の前にぬいぐるみをクリーニングします。
当社では職人がぬいぐるみの修繕作業に入る前に、必ずクリーニングを行っています。

放送時にはお伝えしきれませんでしたが、ぬいぐるみのクリーニングは水洗い&手洗い。
使う石鹸は人体にやさしい天然石鹸で、柔らかいブラシを使い、各パーツなど細かい所まで洗っていきます。
そしてぬいぐるみに付く汚れは水溶性のものが多いので、丁寧に水洗いをしていきます。
機械洗いでは繊細な生地やパーツが傷んでしまうため、1つ1つのぬいぐるみを、クリーニング職人が手作業で洗い上げています。

乾燥させる時にも、熱に弱いぬいぐるみの素材を傷めないように低温乾燥や自然乾燥で乾かしていきます。

ぬいぐるみの修理① 分解・中綿の取り出し

続いて、当社のお直し工房「リアンジェ」での修繕作業に移ります。
今回はパーツや中綿の交換、植毛などが必要でしたので、最初に必要ヶ所の糸を切り、ぬいぐるみの縫い目を丁寧にほどいていきます。

古くなった中綿を取り出すとビックリ!
ぬいぐるみの中に納まっていたとは思えないほど、たくさんの綿が出てきました。
ダニやホコリなど、蓄積した見えない汚れも中綿ごと取り出します。

ぬいぐるみの修理② 植毛

こちらのぬいぐるみをよく見て見ると、鼻の下と右手の一部の毛が抜けてしまっていました。
この場合、植毛を施して復元していきます。

ぬいぐるみに植毛を施す場合、まず毛糸から植毛用の毛を作らなくてはいけません。
長年愛用されてきたぬいぐるみの色は千差万別。
「今の色」に合わせるために、たくさんの毛糸の中から色を見極め、場合によってはミックスしながら植毛用の毛を作っています。
これを縫い付け、長さを揃えて、キレイに植毛を施していきます。

ぬいぐるみの修理③ 顔パーツの取り換えと修繕

放送ではお伝えしきれませんでしたが、こちらのぬいぐるみはお顔のお直しもしています。

劣化でくすんでしまっていた鼻は、新しいパーツに取り替えます。
口の刺繍も補修し、中綿を新しい物に詰め替えると、ぬいぐるみの表情が元気になりました!

ぬいぐるみの修理④ 足裏と耳の修繕<素材を探す>

続いて、足裏と耳の修繕に取り掛かります。
今回は、このチェック柄が重要なポイントです。

一言でチェック柄と言っても、色や種類は様々。
新しい生地として使う布は、もともとぬいぐるみに使われていた柄と、できるだけ似たものを見つけなければいけません。
長年愛用されているぬいぐるみの中には、もう同じ素材が売っていないものもあります。

今回見つけた素材はなんとエプロン!
質感や柄が似ているこの素材は、夜遅くまで探し歩いた末に見つけた物です。

お直しの際には、生地や反物を取り扱うお店だけではなく、寝具売り場、カーテン・クッションなどのインテリア用品、靴下やバッグなどの雑貨からも資材を調達しています。
この素材探しが難しく、物によっては何日探し回ってもなかなか見つからないこともあります。

ぬいぐるみの修理⑤ 足裏と耳の修繕<パーツ作成・修繕>

続いて、ぬいぐるみの足裏パーツを元に、エプロンから新しいパーツを切り出します。
写真に写っているのは足裏パーツの、片足分の部品です。

白い布のような物の正体は『薄綿』
足裏のパーツを単なる布ではなく、2枚の生地の間に薄綿を挟んで芯にすることで、強度を高め、型崩れを防ぐことができます。

パーツを作った後は、新しい中綿を詰め、足裏を縫い付けていきます。
ぬいぐるみの本体とパーツのヘリの部分を『すくい縫い』で縫い合わせていきます。
こうすることで、縫い目が表に出ず、糸が隠れた状態になります。

出演者の方からも、
「近くで見ても縫い目が無い!」
「不思議」
と声が上がる美しい仕上がりになりました。

同様の手法で耳も直し、縫い閉じをしていきます。

完成!

最後に首のリボンを新しい物に巻き換え、毛並みをブラッシングで整えれば完成です!

ご依頼者の方には「(もう靴下を)はかせる必要ないです!」と喜んでいただけました。

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