気が付いたらもうすぐ12月。ダウンジャケットが必要な日も増えてきたのではないでしょうか。
クローゼットからダウンジャケットを出してみると、
「あれ?クリーニングしてから保管したのになんだか汗くさい?」
「クリーニングしたのにシミが落ちてない」
「こんなに汚れてたっけ?」
と、意外と汚れと匂いが気になるということがあります。
もし、クリーニングしたのに匂いと汚れが気になるのなら、それはドライクリーニングが原因かもしれません。
ここではダウンジャケットのクリーニングによくある疑問として、ドライクリーニングについて考えてみます。
⇒後編はこちら
洗えないダウンジャケット。クリーニング店ではどうしてるの?
ダウンジャケットの洗濯表示をチェックしてみると、水洗い不可で洗えない製品ということもあります。
水洗いができないダウンジャケットをクリーニング店がどうやって洗うのかというと、ほとんどのお店がドライクリーニングで洗っています。
なぜ水洗い不可なの?
ダウンジャケットが水洗い不可とされている理由は、ダウンやフェザーが傷むからと解釈されていることが多いようです。
繊維の特徴を知らずに水洗いをしたことで傷んでしまう衣類は実際にあります。
たとえばウール。ウールを水洗いするときは適切な洗い方をしないと、水流と洗濯の摩擦で繊維が固くなってしまい縮んでしまいます。
これは「フェルト化」と呼ばれていて、縮んでしまった衣類を元に戻すことはできません。
吸水性・吸湿性に優れた繊維が水をたっぷり含んでしまうと、乾いたときに洗濯前よりも縮んでしまうこともあります。
余談ですが、先日リサイクルショップでとてもかわいいウール100%のセーターを見つけたんです。
でも、手で触れてみるとウール本来の天然の弾性と包みこまれるような質感がありません。
目がギュッと詰まっていて固くなっているような・・・。
元の状態がわからないので何とも言えないのですが、ゴワゴワした手触りにフェルト化を起こしているように感じたので購入は見送りました。
見た目や洗濯表示だけでなく、実際に手に触れることは大切だなと思いました。
ドライクリーニングとは?
ドライクリーニングは水を使わずに油を原料にした有機溶剤を使って汚れを落とすクリーニング方法で、1830年ごろにフランスで開発されたのが始まりと言われています。
水を一切使わないので縮みや型崩れが気になる衣類でも洗うことができるのです。
油分で洗うことなんてできるの?と思われるかもしれませんが、有機溶剤には様々なものを溶かす性質があります。
たとえばマニキュア落としに使う除光液。マニキュアの主成分は樹脂なのですが、樹脂は水では落ちません。
除光液にはアセトンという有機溶剤が含まれていて、これがマニュキュアを溶かすことで落としてくれるのです。
ドライクリーニングも仕組みは似ていて、衣類の汚れを有機溶剤で溶かして落とします。
有機溶剤と言われるとちょっとびっくりしてしまうかもしれませんが、もちろん安全性に問題はありません。ドライクリーニング用の洗剤とお考え下さい。
ダウンジャケットの汚れはドライクリーニングで落ちるの?
ダウンジャケットに付着しやすい汚れには、
・油溶性の汚れ
・水溶性の汚れ
・不溶性の汚れ
の3種類あります。
油溶性の汚れは落ちる?
油溶性の汚れには、私たちの体から出る皮脂、ファンデーション、口紅、食物油、チョコレート、バター、焼肉のたれや煙(煙には油脂が混ざっています)、油性ペンなどがあります。
排気ガスなど大気中の汚れにも油分が含まれているものがあります。
ドライクリーニングで用いる有機溶剤は油を溶かす性質があるため、油汚れ、油溶性の汚れはとてもよく落ちます。
ダウンジャケットの襟についてしまった皮脂汚れもサッパリ落とすことができますよ。
水溶性の汚れは落ちる?
水溶性の汚れには、しょうゆ、コーヒー、ジュース、紅茶、ワインなどの飲み物、汗、血液、尿などの体液などがあります。
残念ながらドライクリーニングではこれらの汚れはほとんど落ちません。
ドライクリーニング用の洗剤は油溶性なので水溶性の汚れとは馴染みが悪いため落とせないのです。
不溶性の汚れは落ちる?
水溶性でもない、油溶性でもない不溶性の汚れは土埃、泥などです。
これらは水にも油にも溶けない汚れになるので、洗う前に叩くなどの方法で落とします。
ドライクリーニングで落とすことはできません。
ダウンジャケットにつきやすい汚れは?
ダウンジャケットにつきやすい汚れはこちらです。
●汗
水溶性の汚れです。
ダウンジャケットは保温性が高いので、電車の中や室内では汗をかいてしまうことがあります。汗汚れは必ず付着する汚れと言ってもよいでしょう。
●皮脂
油溶性の汚れです。
皮脂は襟元や袖口に付着します。時間が経って酸化が進むとだんだん黄ばんでくるので白いダウンジャケットでは目立ってしまいます。
●飲食物のシミ
水溶性と油溶性が混ざっている汚れです。
食べ物や飲み物のシミもよくある汚れです。時間が経つほど落としにくくなります。
●ファンデーション
油溶性の汚れです。
襟元につきやすいのがファンデーションです。慌ててふき取ってしまうとシミが広がってしまいます。
ドライクリーニングでは落ちない汚れもある
ドライクリーニングは油溶性の汚れには強く、水溶性と不溶性の汚れには弱い洗い方ということがわかりました。
それからダウンジャケットにつきやすい汚れには水溶性と油溶性が混ざっていることがわかりました。
ということは、ドライクリーニングだけではダウンジャケットの汚れを落とすことができないということになりますよね。
そうなんです。
ドライクリーニングでは油溶性の汚れは落とせるのですが、水溶性の汚れ(特に汗汚れ)は落ちません。
「あれ?クリーニングしてから保管したのになんだか汗くさい?」と感じる理由は、実際に汗汚れが落ちていないからなんですね・・・。
でも、最初にお伝えしたように非常に多くのお店がダウンジャケットのクリーニングはドライクリーニングとしています。
ドライクリーニングでは洗っても落ちない汚れがあることがわかってるのに、洗濯表示には「洗濯は専門店にご相談下さい」と書かれているし、困ってしまいますね。
また、口コミでは「このダウンジャケットは洗濯表示がすべてバツになっているので、何かあっても責任持てません。クリーニングはできますが同意書にサインをお願いします」と言われたという声も見つかりました。
専門店でもこういう対応をされてしまったら、いったいどうすれば良いのでしょうか。
デアではドライクリーニングには苦手な汚れがあるということは、クリーニング店をご利用いただくお客様に広く知っていただきたいと思っています。
前編はここまで。
後編はダウンジャケットに最適な洗い方と、家庭でできるメンテナンス方法をご紹介します!
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