Barbour(バブアー)などのオイルド(ワックス)ジャケット・コートは、表面の油がベタついて汚れを吸着しやすく、もともと汚れやすい性質を持っています。
しかし、洗濯表示が全て×で、クリーニング店でもほとんど断られてしまう『洗えない衣類』となっています。
特にバブアーのオイルドコートは英国皇室のアウトドア着として長年愛用されており、日本でも特にファッション好きな人達の間で人気が高く、クリーニングの依頼も年々増えています。
バブアー以外にも、ベルスタッフ、フィルソンやミラレーン、ラルフローレン、ウエストミッドランド アウターウェア等、バーバリーブランドのワックスコットンコートもあります。
オイルドコートは、防水のためにコットン(綿)生地の表面にオイル(油)をコーティングした「ワックスコットン(オイルドコットン)」で作られており、もともとは雨の多いイギリスの羊飼いが、防水のために防寒着の表面に羊の油を塗ったのがはじまりとされています。
クリーニングのデアでもお問い合わせをいただくことも多い衣類ですので、オイルドコートのメンテナンスをご検討の際は、ぜひ以下の点をご確認ください。
仕上がりの希望を確認、適切な作業を選定
オイルを抜き、臭いやベタベタ、表面の汚れを取り除きたい
→クリーニング(オイル抜き)での対応となります。
お品物独特の風合い(しっとり感・ベタベタ感)が無くなり、コットンジャケットのような質感となります。
そのような風合いをご希望の場合、リプルーフ(再オイル加工)は不要です。
汚れやシミ、カビの除去は、程度によりオプションでの作業となります。
風合いは変えずにクリーニングしたい
→クリーニング(オイル抜き)後、リプルーフ(再オイル加工)をします。
リプルーフの際のオイル感は、ご希望により若干とはなりますがオイル量を調節等でご対応いたします。
オイルドコートのクリーニング工程
デアのオイルドコートのクリーニングは、大きく分けて「オイル抜き」クリーニング、「オイルを抜かずに」行うクリーニングがあります。
「オイル抜き」クリーニング
独特の強い臭いをとりたい、ベタベタした感じをなんとかしたい場合は、ドライクリーニングを行います。
表面の汚れ、コーティングされたオイルを落とします。
リプルーフ(オイル再加工)について
オイルドコート独特の“しっとり感”を出すには、クリーニング後のリプルーフが欠かせません。
もちろん、本来の目的である防水性も回復します。
リプルーフは技術と時間を要する、特別な工程です。
「クリーニングをしてから」が原則
リプルーフ(オイル再加工)は、必ずクリーニングとセットで行います。
表面上目立つ汚れが見られない場合でも、クリーニングで細かい汚れなどを落としてからでないと、オイルを入れた時にムラになってしまうためです。
使用する特別配合のオイル
当店では、植物性と動物性オイルを特別に調合したオイルを使用します。
2つを調合すると、粘着性や安定性が増し、オイルの定着も良く、匂いも良くなります。
石油系のオイルは環境や肌にも強すぎてしまい、酸化した時も独特の臭いが強くなります。
仕上がりの調整について
職人によるオイルの量の若干の調整は可能ですが、色の濃淡の調整は難しく、ご希望の仕上がりにならない可能性もあります。
乾燥について
オイルドコートはリプルーフ後、オイルを定着させるため乾燥作業に多くの時間を要します。
また、オイルの定着状況によって、通常よりオイルの定着までに時間がかかってしまう場合があります。
自然乾燥のため、環境によって納期が異なります。
季節・天候・湿度・お品物の素材や状態で前後する場合があります。
高温多湿の梅雨時、夏に入る前はオイルの乾燥が遅くなる場合があります。
クリーニング後、リプルーフをしない場合の仕上がり
「オイル抜きのみ」の場合、さらのコットン地のような感じになり、しっとり感はなくなります。
「オイルを抜かずに」クリーニングの場合、クリーニング後にも元々のオイルは残っていますが、ワックスコットンの防水性の回復や美しい仕上がりのためにリプルーフ加工をおすすめします。
キルティングのコート
キルティングのオイルドコードは、リプルーフをする場合は通常よりも時間がかかります。
仕上げについて
クリーニング後は、低温の乾燥室で乾燥させます。
リプルーフなしの場合は、状態や仕上がりに合わせて、職人が蒸気や手アイロンで仕上げます。
リプルーフありの場合は、自然乾燥でじっくりと乾燥させます。
最適なクリーニング頻度
オイルが繊維を守る役割を果たしているため、数年に1度のメンテナンスで十分です。
ただ、汚れが気になる際はお早めのクリーニングをおすすめします。
撥水、消臭加工などのオプションについて
撥水、消臭加工
撥水加工を希望の場合は、できるかぎり撥水性をもたせるため、オイルプルーフを最小限に留め、撥水用の溶剤でコーティングします。
「防水」は水を通さないことで、「撥水」は防水よりは水を通さない力は弱まりますが、空気は通します。
快適に衣類を着用するために、適度に空気を通し、汗を発散させることも大切です。
「撥水」加工は、効率を上げるためにコートを溶液に浸けてしまうクリーニング店が多いのですが、それでは「防水」加工になってしまいます。
クリーニングのデアでは溶液に浸けずに、職人が1点1点の状態を確認しながら「通気性」も確保する加減で「撥水」加工を手作業で施します。
消臭加工についてもご希望により承りますが、匂いの原因や、感じ方にも個人差がありますので、匂いが取りきれない場合があります。
裾などのほつれや穴の補修、リメイク
一生モノとして大切に、クリーニングやリプルーフで定期的にメンテナンスはしていても、長く着ていくうちに穴ができたり、袖や裾などがほつれてきてしまいます。
縫い込める程度の穴やほつれは、縫い込んで補修します。
かなりダメージがある場合は、布や革などの別生地でのリメイクをご提案することもできます。
よくいただくご質問
色、質感が変わらないか
クリーニングの作業によって色落ちすることはほぼありません。
ただ、コーティングされているオイルが抜けることにより地色が出るため、ベージュ、グリーン、黒、紺などのお色にかかわらず元々のオイルのムラや色の濃淡が目立って見えたりすることがあります。
また、風合いが変わるため、色合いが薄く感じられることがあります。
色、質感のご希望については、クリーニング後のリプルーフ(オイル再加工)作業にて、職人によるオイルの量の若干の調整は可能ですが、色の濃淡の調整は難しく、ご希望の仕上がりにならない可能性もあります。
どのくらい匂いがとれるか
表面のオイルを抜くことでほぼ嫌な匂いはとれ、改善が見込めますが、元々のジャケットのオイルや素材の匂いが強く浸透している場合は、クリーニング後も、またデアの無臭オイルを使用したリプルーフ後も、匂いは若干残る可能性があります。
オイル抜きの場合、どの程度オイルが残るか
オイル抜きの程度ですが、元々の状態によって変わってきます。
通常は、「コートの下に白いシャツを着ても、 オイル移りしないレベル」の仕上がりとなります。
素材が縮まないか
今までの実績上、縮むことはほぼありません。
汚れ落ちについて
シミ・汚れは個別に除去作業を行いできる限り対応しますが、シミ・汚れの種類により、生地の中まで染み込んで変色してしまっている場合などは完全に除去できない場合があります。
カビが生えてしまった場合も、個別に除去作業を行い、できるかぎり状態の回復(カビの除去やにおいの改善)に努めますが、カビの発生が激しい場合はカビ跡がシミとなって残る場合があります。
変色している部分がある場合はクリーニング後もカビ跡が残り、脱色(色抜け)が強く発生する可能性があり、また、強いカビの臭いは完全に取り去ることは難しくなります。
色ムラ、スレ・キズについては、クリーニングやリプルーフでは改善できません。
袖やポケット角などのスレ・白化については、リプルーフの際、特殊な技術を用いて極力メンテナンスは行なっていますが、改善の度合いは生地の劣化状態により異なります。
納期
通常、クリーニングのみの場合で約3週間、オイルメンテナンス(リプルーフ)はオイルをなじませ安定させるため、クリーニング後さらに約8~13週間(2~3ヶ月)ほどになります。
混雑していたり、お品物の状態や時季などによりもう少しお時間をいただく場合があります。
高温多湿の梅雨時、夏に入る前はオイルの乾燥が遅くなる場合があります。
クリーニング可否や追加作業となる付属品の確認
新品からヴィンテージ品まで承っており、ほとんどの場合でクリーニング、リプルーフとも可能です。
ただ、クリーニングは、汚れやシミの種類や状態により汚れ落ちが異なり、リプルーフは、生地の経年により、オイルの定着が悪くなっていくので仕上がりは違ってきます。
また、襟などに違う素材が使われている場合は、下記のように対応の可否が変わってきます。
襟などの素材がコーデュロイやフェイクファー、取り外しが可能なもの
ほとんどが、クリーニング・リプルーフ加工ともにご対応できます。
襟などの素材がリアルファーのもの
ファーの素材で、取り外せる場合は問題ありません。
取り外せない場合、クリーニングで毛が抜けることを防ぐために、クリーニングが弱いものになるため、本体の汚れ落ちが弱くなります。
また、その場合のリプルーフ加工は、ファーにオイルが染み込んでしまう可能性があるため、実際にお品物を確認した上での作業の可否を判断します。
襟などの素材がスウェードなどのレザーのもの
スウェードなどのレザー素材で、取り外せる場合は問題ありません。
取り外せない場合、クリーニングはほぼ問題なく作業できますが、リプルーフ加工は、薄めのオイルでの作業となることがあります。
薄めのオイルでも、スウェード部分に染み込む可能性があり、万が一染みてしまった場合はベタつきなどになってしまうため、実際にお品物を確認した上での作業の可否を判断します。
追加料金となるもの
フードや、ライナー・ベルト等のクリーニングをご希望の場合は、別途料金がかかります。
本体と付属品で劣化状態が異なる場合は、リプルーフにて同じ様な風合いとなるように極力調整します。